生産者を知り、応援したいという気持ちから国産品に対するこだわりを持つ林さん。
そんな彼女が最近ハマっている「おいしいもの」を教えてくれた。
料理の万能!「昆布水」
最近なにかこだわりの食べ物などはありますか?
最近は、昆布にこだわっています。国産の昆布は、90%以上が北海道産です。種類もいろいろあって、代表的なもので言うと日高昆布・利尻昆布・羅臼昆布・真昆布の4種類ですが、それぞれ味が違っています。
でも今、昆布離れが進んでいるんですよね。出汁は顆粒やパックのものを使う人が増えている。私も使わないわけではないし、忙しい時にはそういうものに頼りますけど、やっぱり和食を世界に発信する時代に、昆布は欠かせない食材だなって思うんです。
私は食に昆布をうまく使って取り入れていきたいなと思っているので、冷蔵庫にはいつも昆布の水だしがストックされています。「昆布水」ですね。これに今ハマっています。
昆布水って何にでも使えるんです。
例えばパスタやリゾットを作る時でも、昆布水を入れるだけで旨みが増すし、炒め物でちょっと水を入れたいって時にも使います。もちろんお味噌汁のような汁物には、そのまま出汁がとれるのでとても便利です。
昆布水だけで飲むこともよくありますよ。こぶ茶みたいな印象です。体に良いグルタミン酸が取れると言われているので、2日酔いにも効くという……最近は2日酔いしないですけど!(笑)
作り方も簡単で、麦茶ポットに小さく切った昆布を水と一緒に入れておくだけです。6時間くらい冷蔵庫に置いておけば、もうそれで出来上がります。
3日程度であれば、冷蔵保存もききます。
▲林さんオススメの昆布水。料理の万能出汁に使える。
「北海道食べる通信」でも何度か昆布の話が取り上げられており、林さんの昆布に対するこだわりが伝わる。
確かに昆布出汁の旨みは日本食には決して欠かせないものだと思うが、彼女が昆布にこだわる背景は何だろうか?
昆布にこだわるようになったのは、やはり取材を通してですか?
そうですね。取材を通して昆布の生産者と出会い、昆布を取り巻く現状を知りました。
昆布離れもそうですけど、今、昆布の干し手が足りないんだそうです。
昆布は養殖で漁も行っているので、他の魚とは違って毎年安定した量が取れます。そういう意味では漁獲量は安定しているんですけど、地方の人口減少で人出が足りなくなってしまって、昆布を干す作業をする人がいないというのが結構問題になっているそうです。
▲日本人に馴染み深い昆布。人出不足と消費減に悩まされている。
農業だけではなく、漁業にも影を落とす人出不足。しかし何よりも、昆布離れが進んで消費量が減っていることも、こうした人出不足の原因のひとつにもなっているのだと言う。
日本人は昔から昆布を代表とする「出汁」を使った料理に馴染んできたことから、料理に含まれる繊細な「うま味」に対して外国人よりも敏感だと言われる。そんな日本人の舌を豊かにしてくれた昆布が、どんどん消費されなくなってしまっている。日本人として実に寂しい話ではないだろうか。
顆粒出汁の便利さは、忙しい日々の時間短縮にとても便利だ。ただ、ゆっくり水出しで抽出した昆布出汁の味噌汁の味は、ひと手間かけた満足感とも相まって、とてもおいしく感じられる。
「生産者を知る」「ひと手間かけた労力を知る」。料理はつくり手の労力を知り、実感することで、より美味しく感じられるという、ひとつの例だろう。
生産者を知ってもらうために。
こだわりの先をめざして
今後お仕事でチャレンジしていきたいこと、展望などはありますか?
一過性の取材で終わらせるのではなくて、生産の現場で見つけた課題とか、これから進めていかなければいけないなと感じたことにチャレンジしていきたいなと思います。
今は、昆布をどうしたらもっと家庭に普及できるだろうということを考えていますね。
それと、今後はイベントにも力を入れて、生産者と消費者をつなぐということを徹底してやっていきたいなと思っています。どんどん若い人に生産現場に行ってもらって、その場所で見える素晴らしさというものを体験してもらいたいです。
例えば生産者さんとの座談会だとか、農業や収穫体験とか。普通の観光ツアーとかではありえない、密度の濃い本気の農業体験ができたらいいなと思っています。それが生産者人口が減っているという現状に対して、プラスになってくれればという思いです。
▲実際に生産者に会いに行ける機会をつくり、知ってほしい。チャレンジは始まったばかりだ。
「食」の世界で働く人に聞いた、「食のこだわり」。
今回のインタビューでは、「食」をつくりだしている人達の努力と苦労にしっかりと向き合い、感謝の気持ちを持ち続ける大切さに触れることができた。
消費者の立場では当たり前と思ってしまいがちな「食事」が、実はどれだけの人々の労力と命のうえに成り立っているのか。当たり前をいつまでも「当たり前」にするためには、消費者側が生産者を支えるという意識が必要な時代となってきている。
今日のごはんの前に、少しだけ立ち止まって、この食事はどうやってつくられたのか、何からできているのかを考えてみてはどうだろう。
口にするいつものごはんが、ちょっと違って感じるかもしれない。
▲インタビューに協力していただいた林さん。「十勝屋」の経営と「北海道食べる通信」の編集長を務める。
<お店情報>
お取り寄せダイニング 十勝屋東京都中央区銀座6丁目2番先コリドー街1階
03-3573-7373
営業時間:17:30~23:00
定休日:日曜
http://www.tokachiya.com/<雑誌情報>
「会いに行きたくなる食物語 北海道食べる通信」隔月発刊/情報誌+食べ物付き 3,980円(税・送料込)/北海道内発送 3,500円(税・送料込)
http://taberu.me/hokkaido/