Chewin' Mag.

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喫茶店入門

仕事や勉強、読書。
家だとどうにも集中できない…。
そんなときに逃げ込む先、カフェ。

かくいう私も部屋の環境が万全ではなく、ときたま、カフェに逃げ込みます。カフェは日常でありながら、日常から少し離れられるそんな適度な距離感が魅力です。

中でも「ノマド」という新種の遊牧民たちが集うスターバックス。スターバックスでMac Bookを開いて仕事するだけで、あっという間にカッコいいできる男になれる(気がします)。

スターバックスを「第三の故郷」のように愛し、「東京生まれ スタバ育ち オシャレなヤツは だいたい友達」みたいな人種がインスタグラムで幅を利かせる世の中です。

カフェといえば、スターバックス。(ちなみに私はコメダ派です。)

スターバックスは確かにオシャレで店員もキュートで、Wi-Fiも飛んでて、フラペチーノもおいしい。どこにいっても安定のスタバクオリティ。

安定のスターバックスでオシャレに優雅なひとときを楽しむのも、一興です。
しかし、私はあえて、スターバックスではない喫茶店で優雅なひとときを過ごしてみたい。
昭和生まれの私には昭和の風を感じる喫茶店の方が合うのではないかと思うのです。

第1回「珈琲おーるど」

喫茶店オールド 外観写真下北沢駅の南口を出て、徒歩10分ほど。
茶沢通り沿いにある「珈琲おーるど」。
何度も前を通りかかったことがあり、以前から入ってみたかったお店です。
喫茶店オールド外観 横から店頭の看板「おいしい珈琲はいかがですか」

珈琲の文字が躍る店構えからも相当コーヒーにこだわったお店であることが分かります。
しかし、なかなか、私のような喫茶店初心者は扉を開けるのに勇気がいります。
「常連以外に排他的なお店だったら、どうしよう…」
「センスのある外観だし、田舎っぺみたいな風貌の私が足を踏み入れてよいものか…」
持ち前のネガティブ思考に呑み込まれそうになりますが、勇気を出して一歩踏み出してみました。

落ち着いた照明に、ランプの明かりが各テーブルを照らす店内

店内は落ち着いた照明に、ランプの明かりが各テーブルを照らし、ジャズの音色と柱時計のカチコチという音が心地よい空間です。
白い髭とメガネが特徴のシュッとしたご主人と品の良い綺麗なご婦人がお二人で経営されていました。

二人掛けの座席が数席とカウンター。
光沢のある木のテーブルに年季の入った木の椅子。
二人掛けの席は少し小さめの机で、二人で座れば心理的な距離も縮まりそうです。
ブレンドコーヒーはマイルドな「浅煎り」と苦みとコクの「深煎り」から選ぶことができ、私は深煎りをラムレーズンのケーキとセットで注文してみました。

「深煎り」コーヒー

コーヒーは深煎りといっても、口に入れた瞬間はそれほど苦みを感じず、後から苦みが来る感じで、飲みやすい!
独特の酸味のあるコーヒーが苦手な私ですが、そういったものは一切感じられません。

ラムレーズンのケーキ

ケーキは上にのったラムレーズンがほろ苦く、芳醇な洋酒の香りを感じる大人な味わいです。
濃厚でしっとりとした生地もレーズンたっぷりで、じっくり味わえるおいしさです。
甘すぎないので暴力的な甘さが苦手な人にもおすすめです。(写真が下手で黒豆のように写ってますが、実際はちゃんとラムレーズンです。)

メニューに「自家製ケーキ」と書いてあったので、ご主人にお話を伺ってみました。
ケーキはすべてご主人と奥様が一緒に手作りされているそうで、レシピをもとに独学で作っているそうです。他店のケーキを食べ歩いたり、お金がない時はショーケースを眺めたりして学んでいったといいます。
ご主人は「職人さんのケーキと違って、素朴な味でしょ」と謙遜されていましたが、プロの味に勝るおいしさでした。また、カシスケーキやチーズケーキなど種類も多く、季節や日により、メニューも変わるそうで、他のものも食べてみたくなりました。

―この写真はオープン当時のものですか?
「一年ほど前に撮ったものです。白黒だから古くみえるでしょ。」

―写真家の方に依頼されたのですか?
「私が撮ったんですよ。小さいデジカメで。」

な、な、なんと!こんなオシャレな写真をご主人が趣味で撮っていらっしゃったのです。
しかも、一眼レフなどではない普通のカメラで撮ったというから驚きです。

主人が撮影した東京駅近くの夕焼け

隣のパリやロンドンの風景だと思っていた街灯の写真も、東京駅近くの夕焼けが綺麗だったからご主人が撮影したものだそうです。
こんなオシャレな街灯が東京にあったなんて!

写真だけでなく、入口付近にご夫婦を描いたと思われる素敵な絵が飾ってあり、そちらも気になりました。
やはり、下北沢。アーティストもその辺に転がっている(良い意味で)のかと思い、また、ご主人に話しかけると、
「その絵も私が趣味で描いたんですよ。」

な、な、な、なんと!!!

シンプルで抽象的でありながら、絶妙な配色のセンス溢れるこの絵もご主人のお手製でした。(気になる方は是非、現地でご確認ください。)
シンプルで抽象的でありながら、絶妙な配色のセンス溢れるご主人の絵

もう一枚の奥にあるチャーミングなこちらの絵もご主人が描いたものです。
頭を怪我して坊主になってしまったときに描いた自画像だそうです。
ご主人、多才である。
アンティークランプ

店内のランプはアンティークかと思いきや、
12年前に国立から下北沢へと移転し、その時に購入したものだそうで、
月日を経て、お店の空気に染まり、自然とレトロな味わいになったといいます。

ずらっと並ぶコーヒーカップ

カウンターの後ろにずらっと並ぶコーヒーカップは、ご主人が会社員時代から集めたものだそうです。

「給料から少しずつ出して集めた。お金のない時は一脚でも。」
いつか喫茶店を開こうと思い、こつこつ集めたコーヒーカップたちにはご主人の夢が詰まっていると思うと、コーヒーがさらにおいしく感じます。

喫茶店を始めたのは40年前だそうです。きっかけを聞いてみたが、「特にない」とのこと。案外、何かを始めるのに、きっかけなんてなくて良いのかもしれません。

人の気配を感じるセンスあふれる品々。静かだけど柔らかい雰囲気。
空間に人柄がにじみ出るのかもしれないなと思いました。

たまには、いつもと違う空気に触れることで新たな発見があるかもしれません。

そして、いろいろとお話を伺ったのに、一番重要なコーヒーへのこだわりを聞くのを忘れてしまったことに、この原稿を書いていて気付きました…。ご主人の後ろにこだわりの器具があったので、もちろん相当こだわって淹れていらっしゃると思います。是非、自分の舌で確かめて頂きたいです。

 

珈琲おーるど
東京都世田谷区代沢5-6-15 1階
03-3419-8157

定休日:第3月曜日
営業時間:午前10時~午後10時30分

ケーキセット(深煎り珈琲):1000円
※価格、メニューは取材当時のもので変更となる可能性があります。

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