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知られざるバルサミコの魅力を知る ワイン&グルメ ジャパン2017 レポート(その2)

「ファベックス2017」と同時開催された「ワイン&グルメジャパン2017」では、ワインや各国の食料品に関するセミナーが数多く開かれていました。生産者から直接話が聞けるということもあって、人気のセミナーは予約がいっぱいになるほど。その中のバルサミコのセミナーと、ギリシャのオリーブオイルのセミナーを受講しました。今回はバルサミコのセミナーについてレポートしたいと思います。

今回セミナー講師として登壇したのは、モデナにあるアチェタイア・マラゴーリ・ダニエーレのソフィア・マラゴーリさん。750樽のバルサミコを所有するメーカーの後継者です。

セミナー講師として登壇した女性
ソフィアさんは大学1年生のときに家業を受け継いだそうです。「アチェタイア」はバルサミコの醸造所を意味します。

バルサミコには等級があります

バルサミコの歴史は古く、紀元前70年には食後酒として書物に登場しており、イタリアでは古くから親しまれています。日本でもイタリア料理ブームの後、家庭でもよく使われるようになり、おなじみの存在ですが、2つの品質認定表示による等級が決められていることは、あまり知られていません。

EUの食材にはDOPとIGPという品質表示認定制度の等級があり、イタリアでは生ハムやチーズ、オリーブオイルなどにこれらの等級が定められていますが、バルサミコにもこの2つの等級があります。バルサミコの場合は下記の条件で等級が決められます。

バルサミコの等級づけの条件

IGP

DOP

原料 ぶどう果汁を煮詰めたモスト、ワインビネガー ぶどう果汁を煮詰めたモスト
熟成期間 60日以上 12年以上
製法 大量生産。伝統的でない製法 伝統的な製法
瓶詰方法 各社で瓶詰め バルサミコ酢協会に各社から集めて認められたもののみを瓶詰め
使用ボトル 250ml以上の濃い色のボトル 100mlの透明な専用瓶

IGPのものはスーパーなどで大量に販売されているのに対し、DOPのものは数量もごくわずかなため、販売しているところも限られています。価格もIGPは千円程度からですが、DOPのものは日本で購入すると1万3千円程度からとかなり高額で、日本にはまだあまり流通していません。

原料も熟成期間も製法も全く違っているこの2種類のバルサミコ、当然ですが用途も全く違ってきます。IGPのバルサミコはどちらかと言えば火を通して毎日サラダなどに使うのが一般的なのに対し、DOPのものは料理に数滴垂らすような使い方。大量のソースとして使うことはありません。

セミナー講師、登壇中の様子
ソフィアさんが手に持っているのがDOPのバルサミコ専用のボトル。アルファ・ロメオなどのデザインで知られるジウジアーロの手によるもので、バルサミコの一滴をイメージしたものだそうです。

伝統的なバルサミコの製法

ここで伝統的なバルサミコの製法について触れてみましょう。

モデナ産のブドウ果汁を煮詰め、モストを作ります。ぶどう品種はトレッビアーノ・ディ・モデナという白ぶどうに代表される7種のみ。最高品質のものを全て手で収穫します。ワイン用よりも1ヶ月半遅く摘み取るため、酸が落ちて糖度が高くなったものを使用します。

アチェタイアは建物の中でも寒暖差のある屋根裏にあり、熟成に使う5種の樽(桑、アカシア、オーク、栗、桜)が並べられています。熟成期間中に水分が蒸発していくので、それに合わせて樽を小さくしていきますが、この仕組みのことを「バッテリア」と呼びます。

夏に一番大きな樽に新しい原料を入れ、古いものを別の樽に移す作業をします。違う木を使った樽に移し替えることで、原料に色と風味を与えていくのです。

12年かけ、バッテリアの一番小さな樽にバルサミコができあがりますが、その樽から製品になるのはなんとわずか10%のみ。そのバルサミコも、IGPのように直接瓶詰め販売することは出来ません。バルサミコ酢協会にそれぞれのメーカーが持ち込み、テイスターによる厳しいテストをパスしたもののみが専用のボトルに瓶詰めされます。瓶詰め後、各メーカーに戻され、ようやくメーカー名を記載したラベルを貼り、出荷することを許されるのです。ちなみに、ラベルに熟成年を記載するのは禁止されています。DOPのボトルに詰められるのは、1樽からわずか10本。その希少さがわかります。

希少なDOPバルサミコは「ギフトのようなもの」

最後にDOPのバルサミコを試食しました。

大きなかたまりのパルミジャーノ・レッジャーノに、ほんの少しのバルサミコをたらす、という方法での試食です。実際に料理に使うときも、肉や魚、デザートやフルーツなどに数滴たらすことが多く「ギフトのようなもの」とソフィアさんは言います。

まずはバルサミコだけを指でぬぐって味わってみました。日常的に使っているバルサミコとは全く違うものであることがあります。まず、とがった酸がなく上品。まろやかで濃厚な味です。そして、やわらかでぶどうの香りが豊か。お皿の上にぬぐった跡が残るのですが、きれいなグラデーションになりました。それぞれの色には樽の影響が出るのだそうで、黄色は桑とアカシア、赤は桜、茶はオークと栗からくる色なのだそう。チーズに少しかけただけなのですが、そのふくよかな味わいが、さらにチーズを引き立ててくれます。

なかなか手に入るものではないのですが、日本でも手に入れることはできるそうです。とびきりのDOPバルサミコと食材を合わせて、特別な日の食事をするのもいいかもしれませんね。

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