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食文化から読む古典ラブロマンス

光源氏も顔負けのイケメン、「みちより」

平安時代の純愛モノに、「落窪物語」があります。ご存知の方も多いかもしれません、日本版シンデレラ、とも呼ばれており、継母にいびられいじめられしてる薄幸のヒロイン「女君」に、顔良し、家柄良しの貴公子「みちより」が出会うラブロマンスです。後半に入ると本当は怖いグリム童話みたいになっていくのて、今は見なかったことにします。

物語の中でも撮れ高一位二位を争う圧巻の胸きゅんシーンは、間違いなく、降りしきる雨の中、みちよりが女君の元へ駆けつけるところでしょう。

雨に濡れるイケメン
©Adán Jones
( http://free-images.gatag.net/2012/11/09/180000.html)

 

……雨に濡れるイケメン、癒されますね。じゃなくて。

こんな雨では、牛車なんて出せません。「でも、あなたに会いたくて震える。」高貴な服を脱ぎ捨て、たった一人だけお供を連れて、Googleマップどころか電灯すらなく、「どこここ?いまどこ?」状態の暗闇の豪雨を果敢に前進します。傘で顔を隠し、位も意識も低い人達が小突いてきたりしてうんち踏んじゃったりしながら、愛しい女性の元へ馳せ参じます。

このシーンのなにが感動的かというと、この時期の貴族にとって、雨、NGなんです。平安時代のやんごとなき方々は、とっても体が弱いのでした。

なぜ体が弱いのか? 平安時代のムーブメントと食生活

平安時代には、空前の仏教ブームが訪れていました。特に貴族階級は、熱心にハマります。「肉は食ってはいけない、むしろ食い物ではない」感が蔓延している、当時の貴族社会の代表的献立の品目は、なんとおよそ30品。「金持ちはいいもん食ってる」を体現しているのです。

網の上で焼く焼き肉

焼き肉ももちろんダメ。ちなみに私が男性に言われてうれしい言葉ナンバー1は「焼き肉おごるよ」です。

ただ、品数は多いのですが、落窪物語でも、「海藻を干したもの」で朝食を摂るシーンがあるように、副食には乾物や干物などの保存食品が多く見られます。乾物は削り物とも呼ばれ、例えば鮭を固く干したものを小刀で削り、椀に入れてお湯を注ぎやわらかくしてから、酢、酒、塩、醬(ひしお)の調味料をつけて食べていたようです。

新鮮な植物から得るビタミン、肉から得る動物性蛋白が足りない豪華な食事。加えて主食は、強飯と呼ばれる蒸したご飯ですが、一人当たり1日3合半程度を食べていたらしく、カロリーだけならこれで十分です。よって、平安時代の貴族は栄養バランスが非常に悪いと同時に、酸性体質であったと考えられます。

栄養不足だからこそ成立する、命懸けのラブロマンス

お多福さんイラスト
( http://www.sozai-library.com/sozai/7277)

抵抗力が弱く、疲れやすい平安貴族は、雨に当たって風邪などひいてしまえば、あなや一大事。生死に直結するんです。ですから、降りしきる雨の夜道を女性のために歩くということは、本来なら「ありえない」出来事です。今でいう「漫画じゃあるまいし」的な展開なのでした。

♯色白
♯しもぶくれ
平安時代の女性のビューティー♯タグも、ビタミン不足などによる慢性的な栄養失調で、青白く腫れてむくんでいたのでしょう。
不健康な食生活の中、二人を引き裂くレ・ミゼラブルな雨。だめよみちより危ないわ、そんな、命懸けで私のために……? 女君はどれほど嬉しかったことでしょう。愛し合う二人は、諦めかけた逢瀬に突然歌い出します。――和歌を。
うーん、胸きゅん。食事の歴史を鑑みると、ラ・ラ・ランドもびっくりな感動の波が押し寄せます。

そして現代に生きる私達は、肉も魚も野菜も果物もきちんと食べて、雨ニモ負ケズ風邪ナドヒカヌ、強靭な肉体を作る必要があります。つまりは、 「※食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、健康的な食生活を心がけましょう。」

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焼き肉さん太郎
焼き肉やお好み焼きといった、鉄板の誘惑にめっぽう弱く、
うなぎの香りだけでもりもりごはんが食べられる気がします。
毎日とにかく食べ、田舎のお母さん、私は元気です。
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