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未来を救う昆虫食のススメ2

昆虫食はゲテモノにあらず。
アンジーに倣う。

2017年2月。ハリウッドスターのアンジェリーナ・ジョリーが、ポル・ポト政権時代のカンボジアを描いた映画「ファースト・ゼイ・キルド・マイ・ファーザー」のプロモーションで訪れたカンボジアで、5人の子どもたちと一緒にクモなどの昆虫を食べる様子がBBC Newsのツイッターで紹介され話題を呼びました。

アンジーの一連の行動には、称賛の声がある一方で、不快感を表す声も挙がっています。しかし、彼女がなぜ昆虫を食べて見せるのか? その理由に、私は深く共感します。

アンジーが初めて昆虫を食べたのは、長男のマドックスを養子に迎える際に訪れたカンボジアでのことでした。彼女が昆虫を食べた背景にあるのは、我が子の故郷であるカンボジアの文化に対する敬意であり、その文化を子どもに伝えるためだったと言われています。

そうなんです。日本でも密かなブームとなっている昆虫食ですが、結局は興味本位のゲテモノ喰いです。しかし、昆虫食をする人々は、生きるためにそれを食べていると言う事を忘れないで欲しいと私は考えます。

タイの昆虫狂奏曲。
過ぎたるは猶及ばざるが如し

さて、前回に引き続き舞台を南国タイに移しましょう。タイで最も昆虫食が盛んなのは東北地方(イサーン)になります。イサーンは海に面していないため、動物性たんぱく質の供給源として、昆虫食文化が発展しました。

タイの地図

それが今から10年程前、タイに健康ブームが到来し事態が一変します。都心部にたくさんのフィットネスクラブが建つのと同時に、昆虫食にも注目が集まりました。ところが、何事もやり過ぎ傾向にあるのがタイの国民性。「虫は高タンパク低カロリーなんだって!」と、いくら食べても大丈夫と錯覚した人が続出したのです。

そこで、タイ保健相がタイ人の好きな昆虫8種類の栄養素を調べたところ、その内容は肉や卵に近く、特にイモムシ系はコレステロール値も高め。更には油で揚げるので、脂質もたっぷり。

そもそも、昆虫はイサーンの人たちが生きるために食べていた食材ですから、これぐらいのパンチ力はあって当然。ついには、タイ保健省が「昆虫の食べ過ぎに注しましょう」と呼びかける事態にまで発展し、空前の昆虫食ブームは終息しました。

昆虫食の本場、イサーンの
一般家庭で虫をいただく。

食べる昆虫の種類で言えば、バンコクとイサーンに大きな違いはありません。ただ、やはり鮮度が違うらしく、イサーンで食べる昆虫は本当に美味しい。

バンコクの昆虫屋台は、揚げた後にシーズニングなどで強めに味を付けるのですが、イサーンの家庭で出てくる昆虫は素揚げして塩を振りかけただけ、もしくは塩ゆでしただけ。それなのに、止まらない美味しさなのです。
お皿に盛られた昆虫食私史上最高に美味しかった昆虫料理、素揚げコオロギ。アンジーも「コオロギとビールは最高」と言っていました。

ある日、庭先でコオロギを食べながらビールを飲んでいると、近所の5歳の女の子が現れて、なにやらモジモジしています。

「どうしたの?」
「……それ、私も食べたいな」
「いいよ、一緒に食べよう」
「ありがとう!」

そうです、これが本来の昆虫食の姿。わー、きゃー騒ぎながら食べるのではなく、そこにあるから食べる。おいしいから食べるもの。

「タッカテン(バッタ)っておいしいよね」
「うん。でもね、お姉さんこれはジンリッ(コオロギ)」

そんな会話が生まれる一皿なのです。

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ちょび
旅と猫と息子を愛する、見た目は子ども、身体は四十路。
「食」と「歴史」「土地」「人」を関連付けて考えるのが趣味。
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