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パスカル・マーティ氏が手がける
清酒酵母の白ワインに迫る

シャトー・ムートンやオーパス・ワンで醸造家として腕をふるい、その後チリのアルマヴィーヴァを手がけ、現在はチリのヴィニャ・マーティの主である名醸造家、パスカル・マーティ氏。常に新たなワイン造りに挑むマーティ氏の最新のワインは、なんと清酒酵母を使った白ワイン。その新たなる挑戦に迫ります。

名醸造家の新たなる挑戦は、
清酒酵母を使った白ワイン。

清酒酵母を使った白ワイン

チリのワインというとどんなイメージがあるでしょうか。おそらく、普段飲むのにちょうどいい、手頃な価格なのにしっかりおいしいワインを想像する方が多いのではないでしょうか。

とはいえ、チリワインにもプレミアムなワインはあります。例えば、カリフォルニアのオーパス・ワンのように、フランスのシャトー・ムートンとチリのコンチャ・イ・トロが手を組み、世に放った「アルマヴィーヴァ」はその好例。チリを代表するプレミアムワインとして知られる存在となっています。

その、アルマヴィーヴァをはじめとした、錚々たるプレミアムワインを手がけた名醸造家が、新たな取り組みをした白ワインのファーストヴィンテージを、日本限定で発売することになりました。ワインの名前は「ぎんの雫 グット・ダルジャン ソーヴィニヨン・ブラン」。

ぎんの雫 グット・ダルジャン ソーヴィニヨン・ブラン
「ぎんの雫 グット・ダルジャン ソーヴィニヨン・ブラン」 ぎんの雫という名前は、ワイン漫画「神の雫」の原作者、亜樹直氏がつけたもの。 亜樹直氏はラベルデザインのコンセプト立案にも関わっている。

ぎんの雫に使われているのはなんと清酒酵母。ワイン酵母を使う清酒はよく聞きますが、その逆は聞いたことがありません。なぜ清酒酵母だったのか。また、どんなワインなのか。ワインを手がけた醸造家、パスカル・マーティ氏にインタビューをする機会を得て、その秘密に迫ってきました。

パスカル・マーティ氏
パスカル・マーティ氏
フランスの5大シャトーのひとつである「シャトー・ムートン・ロートシルト」や、ムートンとモンダヴィのジョイントベンチャー「オーパス・ワン」、チリのプレミアムワイン「アルマヴィーヴァ」で醸造家として腕をふるった後、
チリで自らのワイナリー「ディオニソス・ワインズ」を設立。上質なワインを造ることで知られる名醸造家。

清酒酵母を選んだ理由

もともと、白ワインを超低温で発酵させたワインを造りたいという考えがありました。白ワインに関していうと、できる限り低温で発酵を行うことで、その魅力となるアロマが最大限に出るものと言われています。

通常は12度がその下限と言われていましたが、もっと低くできないか、と考えたときに、日本で出会った日本酒、特に吟醸酒の低温発酵にいきつきました。吟醸酒の発酵温度は6~10度。ときには5度を下回る温度で発酵が進むプロセスもあります。

ソーヴィニヨン・ブラン

なぜ7号酵母を選んだのか

2014年に獺祭で知られる旭酒造の桜井博志氏と会う機会があり、私が白ワインで目指す低温発酵について話をしました。そこで薦められたのが清酒の7号酵母でした。7号酵母は真澄で知られる、長野県の宮坂酒造で生まれた酵母で、多くの酵母の中でも安定しており、低温発酵に向いているものでした。

ソーヴィニヨン・ブランを選んだ理由

ソーヴィニヨン・ブランはとてもアロマティックなぶどう品種です。また、ワイナリーで造るぶどうの中で、最初に収穫されるぶどうでもあります。

日本醸造協会から聞いていたのは、清酒はワインを醸造するときに使う、二酸化硫黄を使わないので、酵母にその耐性がないということでした。なので、二酸化硫黄を発酵まで使わず、酸化に気を使いながら、最後に少し使うだけにとどめています。

二酸化硫黄を使うのを少なくした分、他の種類のぶどうがセラーに入ってきている状況下では、さまざまな酵母や雑菌が混入する恐れがあり、シーズンの最初の、セラーがきれいなうちに醸造をするという意味でも、最初にセラーに入ってくるソーヴィニヨン・ブランは適していると言えるでしょう。

ソーヴィニヨン・ブラン、イライアを比較テイスティング
ぎんの雫と、マーティ氏が同じチリのレイダ・ヴァレーで造る
ソーヴィニヨン・ブラン、イライアを比較テイスティング。
イライアには青草やハーブ、柑橘類のアロマが感じられるのに対し、ぎんの雫は白い花などの
フローラルなアロマを感じました。奥行きがあり、しっかりとうまみを感じられる味わいに仕上がっています。

7号酵母を使うことや、
超低温発酵で発見したこと

ワインの発酵期間がとても長いのです。通常ワインの発酵は2週間程度で終わるのですが、このワインは発酵が終わるまでに40日かかっています。通常より2~3度温度を下げているのですが、発酵が終わらないので怖くなってしまい、温度をあげてしまいました。それでも発酵が終わるまでに40日かかりました。一昨年の経験から、今年は途中で温度をあげずに発酵させたところ、発酵が終わるまでに70日かかりました。今回日本でリリースするのは、その40日発酵にかかったものになります。長く発酵する分、酵母の影響が大きく出ます。その分がっしりとして深みがあり、アタックの強い奥行きのある味わいに仕上がりました。

香りの点ではソーヴィニヨン・ブランの香りを凝縮した、華やかなものになっています。通常、ソーヴィニヨン・ブランのというと、青草の香りや野菜の香りをイメージすることが多いと思うのですが、このワインにはそうした傾向は少なく、どちらかというとヒヤシンスやローズ、ジャスミンといった花のような香りが目立ちます。発酵するときに炭酸ガスの発生が少ないこともあり、香りが飛びにくいといったこともあるかも知れません。

ソーヴィニヨン・ブラン

食事と合わせるのなら……

マリアージュを想像するよりは、実際にさまざまなものと合わせてみて分析をするのが好きなのですが、チリで食事と合わせたときは、海老や白身魚など、魚介類全般に合うと思いました。特にブラジル料理のムケッカ(白身魚をココナッツミルクやトマトとともに煮たもの)によく合うことにびっくりしました。

日本の食事であれば、伝統的な和食にとても良く合うと思います。特に刺身。刺身とソーヴィニヨン・ブランを合わせると、通常のものであれば苦味や、ミネラルのメタリックな味わいが目立ってしまうのですが、それがないのです。刺身とワインを合わせたときのイメージを覆すワインになっているのではないかと思います。また、昨日鱧を使ったお椀をいただきましたが、それがとても良く合うことに驚きました。

食事とともに味わいたい白ワイン

ゆっくりと食事とともに
味わいたい白ワイン。

マーティ氏のお話を伺いながら、他のソーヴィニヨン・ブランと比較テイスティングをする貴重な機会をいただきました。フローラルでしっかりとしたうまみの感じられるワインに合わせたいと思ったのは、海老真丈のお椀や、しっかりとだしを使った魚介のお料理でした。

上品でたおやかな印象のぎんの雫は、ちょっと特別な日に、ていねいにだしを取って作った和食をゆっくり味わいたいときにしっくりきます。和の力が引き出した洋のぶどうの香り高さを感じられるワインを、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

ぎんの雫 グット・ダルジャン ソーヴィニヨン・ブランの購入はこちらのページへ。
https://wsommelier.com/item/2101340001615.html

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